Claude と共に行く四国旅行 ― 旅行会社を超える「旅のしおり」の作り方と、それを崩す勇気

2026年9月13日から22日まで、夫婦2人で神戸と四国・瀬戸内を10日間回ってきました。神戸イン・神戸アウト、レンタカー1台、8泊すべて素泊まり。

この旅の計画は、ほぼすべて Claude(Anthropic の AI)と一緒に組み立てました。できあがった「旅のしおり」は、正直なところ旅行会社のそれを超えていたと思っています。ただし、それ以上に効いたのは旅の最中もずっと Claude に相談できたことでした。

この記事は、行った場所の紹介ではなく、どうやって計画を立て、どうやってそれを崩したかの記録です。


この旅の骨格

  • 期間:2026年9月13日(日)〜22日(火)/夫婦2人
  • 往復:新千歳 ⇄ 神戸空港
  • 移動:レンタカー(カローラツーリング)を神戸で借りて神戸で返却
  • 宿:8泊、すべて素泊まり
  • 大まかなルート:神戸 → 姫路・倉敷 → しまなみ海道・今治 → 道後・宇和島 → 大洲・梼原・高知 → 高松 → 直島 → 淡路島 → 神戸

1. 役割分担を決める ― 人間が決めること、AI に任せること

最初にやったのは、動かせないものを先に固めることでした。

人間が先に決めたもの(=以後、絶対に動かさない)

  • 往復の航空券
  • レンタカーの貸出・返却の日時と場所
  • 宿8泊すべて
  • 大きなルートの流れ

Claude に任せたもの

  • 宿と宿の「あいだ」をどう埋めるか
  • 店や施設の営業時間、定休日、料金、駐車場
  • 移動時間と、そこから逆算した出発時刻
  • 天気が崩れたときの代替案

予約が絡むものは、あとから動かせません。動かせないものを先に宣言しておくと、AI は残った余白だけを設計してくれます。 逆にここが曖昧なまま「四国を10日で回りたい」と投げると、どこにでもある観光地リストが返ってくるだけです。


2. Claude に何を伝えるか ― ここで結果の8割が決まる

一番効いたのは、好みではなく「制約」を伝えたことでした。実際に渡した文章は、だいたいこんな内容です。

  • 歩く時間は普通の人の1.5〜2倍で見る。無理をしないための余白は最初から入れる。これがこの旅の設計思想。
  • 夕食はコース料理を避け、単品で頼める店を中心に。自分の手で金額を止められる形にする。
  • 昼食は重たくないもの。炭水化物は少しだけ。
  • 予約済みのもの(航空券、レンタカー、宿8泊、予約を入れた店)は動かさない前提で考える。
  • 空白時間の使い方は勝手に埋めない。推奨案を先頭に置いた3〜4択で聞いてほしい。
  • 事実は必ず裏を取る。定休日、営業時間、価格、改装や移転の有無、駐車場の制限。媒体によって表記が揺れているときは「揺れている」とそのまま書き、確認先の電話番号を添える。推測で断定しない。

この中でも、効き目が大きかったのは次の2つです。

「歩く時間は1.5〜2倍で見る」
これを最初に宣言したおかげで、詰め込みすぎのスケジュールが一度も出てきませんでした。分刻みの行程表は、作った本人が一番苦しむことになります。

「勝手に埋めない。3〜4択で聞いて」
結果として、この旅には「勝手に決められた予定」が1つもありません。 全部、選択肢を見た上で自分たちが選んだものです。これは満足度にかなり効きました。

たとえば初日、チェックイン15:00から夕食19:00まで4時間が空いていることを Claude が「論点」として先に出してきました。当日は32℃の真夏日予報。大浴場と部屋での休息にあてると決めましたが、翌日は10:30発で姫路・倉敷の長丁場だったので、これは正解でした。


3. Google マップの使い方

行きたい場所は先にピンを打つ

思いついた店や施設は、その都度 Google マップに保存していきました。これが計画の素材になります。

Claude に貼るときは「リンク+店名+住所」

共有用の短縮リンク(maps.app.goo.gl/...)は、AI 側から開けないことがよくあります。リンクだけ貼っても「読めません」と返ってくる。店名と住所を一緒に書いておくと確実です。

位置関係は、自分の目で確かめる

これは失敗談です。高知で「あか」という店に行く経路を相談したとき、Claude は「帰りに あか の前を通る」と書いてきました。私が地図を見たら、城とは反対方向。指摘すると、こう返ってきました。

私は番地の並びから「帰りに あか の前を通る」と書きましたが、地図を見ていない推測でした。

住所の数字の並びから位置関係を推測することがある、ということです。地図の情報は、地図で確かめる。

駐車場は「上限料金」と「宿の優待」で調べてもらう

高知で2泊するにあたって、駐車場をかなり細かく調べてもらいました。札幌だと、ホテルの優待を使わず少し歩いた上限ありの駐車場に停めた方が安くなることがあります。同じ手が使えるかを聞いたところ、

  • ひろめ市場のタイムズは終日30分200円、昼間最大料金なし
  • したがって宿の優待800円が最強、札幌型の裏技は高知では効かない
  • ただし2泊目の優待券が出ない場合に備えて、東洋電化中央公園地下駐車場(夜間18時〜9時 800円、325台、高さ制限2.0m、088-872-7450)を第2候補に

という結論まで出ました。ここまで詰めてあると、現地で悩む時間がゼロになります。


4. 1日1チャットで詰める

10日分を1つの会話で詰めようとすると、後半で前半の細部を忘れていきます。そこで、「1つのチャット=1日」に分けました。

そして各チャットの冒頭に、共通の進め方をあらかじめ書いておきました。

  1. まず旅のしおり(PDF)を読み、担当日の既定プランを把握する
  2. 天気を取り直す(予報は数日で変わる)
  3. 空白時間と未決事項を洗い出し、論点として先に提示する
  4. 選択肢を出して本人に決めさせる
  5. 事実の裏を取る
  6. 決まった内容をドキュメントに保存する
  7. カレンダー用の .ics ファイルを作る

この中で一番ありがたかったのが 3の「まず論点を出す」 です。いきなり完成した行程表を見せられても、どこを直せばいいのか分かりません。「ここが空いています」「しおりのこの点が揺れています」「この並びは体力的に無理があります」と先に言ってくれると、判断だけに集中できます。

天気の取り直しも効きました。9月9日時点の初日の予報は「28/24℃・降水確率65%」でしたが、9月11日には「32/26℃・降水確率50%」に変わっていました。雨対策の日から、暑さ対策の日へ方針が変わったわけです。


5. 旅のしおりにする

決まった内容を、A4のPDFにまとめてもらいました。日ごとに、時刻・移動・店・予約番号・電話番号・料金・代替案。

旅行会社のパンフレットを超えていたと感じた理由は、たぶん単純で、載っているのが「一般的な観光情報」ではなく「私たち用に絞り込まれた情報」だからです。歩く距離が抑えてあり、単品で頼める店が並び、雨が降ったときの逃げ道が書いてある。そういうものは売っていません。


6. カレンダーに入れる ― 当日はスマホだけを見る

紙のしおりは持ち歩きましたが、実際に当日見ていたのはスマホのカレンダーでした。2層に分けています。

  • 全体スケジュール … 移動と宿だけの、ざっくりしたもの
  • 日別の詳細 … 時刻ごとの予定。代替案も「◆」付きで一緒に書いてある

Google カレンダーに直接書き込む連携は使えなかったので、.ics ファイルを作ってもらい、Google カレンダーの「設定 → インポート / エクスポート」で詳細用のカレンダーを指定して取り込みました。

ここで1つコツがあります。 そのまま作ると、修正版を作り直して入れ直したときに全部ダブります。「UID を固定して」と頼んでおくと、同じ予定は上書き更新になり、重複しません。 これを知らずに2回インポートすると、後始末がかなり面倒です。

最終的に、10日分・154件を1本の .ics にまとめてもらいました。


7. しおりは土台。崩すためにある

ここからが本題です。綿密なしおりを作る目的は、その通りに動くことではありません。 変更を判断するための土台を持っておくことです。

天気で、前日に決める

しまなみ海道の日は、直前まで雨予報で「川舟流しはパス、亀老山もあやしいので屋内展望台のある第2候補を用意」という状態でした。ところが当日は晴れて、亀老山展望公園からの絶景を見られました。

今治のホテルにサウナが付いているので、此処の情報は知りませんでした。(妻のブログより)

店は、その場で差し替える

  • 道後の夕食候補だった道後麦酒館は、ビールを飲まないと本領が出ない店。近くの鯛めしスタンドに変更
  • その日の昼は、道の駅「風早の郷 風和里」で買った鯛めし300円で済ませました。蛇口からみかんジュースが出る道の駅です
  • 大洲の昼は、店名を勘違いしたまま「大洲炉端 油屋」本店へ。ところがランチはランチメニューのみで、サラダがない。「メニューは炭水化物のみ」という誤算もありました
  • 宇和島の「ほづみ亭」は当たりでした。骨煎餅100円がコスパ最高。鯛めしその他をしっかり頼んで2人で7,000円を切るくらい

こういう差し替えも、現地でその場で相談しました。

道の駅ふわりで、混ぜ飯の鯛めし、宇和島は卵かけご飯風の鯛めし。道後の足湯で何故かテレビの取材を受ける羽目になり、アナウンサーの人から鯛めしは全部で三種あると教えてもらいました。(妻のブログより)

想定外の外部要因 ― 「なにわ男子」

最大の誤算は、人気アイドルグループの公演が高松で3日連続で行われていたことでした。シルバーウィークと重なって、

  • 高松でホテルが取れず、初めて民泊を利用
  • 高松港がごった返す
  • 翌朝のサンポート(あなぶきアリーナ香川と同じ敷地)の駐車場が読めない

宿の方からも「いくつか候補を持っていた方がいい」と言われました。そこでその場で Claude に代替駐車場を出してもらい(ミニッツパーク24h浜ノ町第1ほか、24時間600円など)、結局は7時に宿を出てサンポートに停めるという判断をしました。

外部要因は、どれだけ綿密に計画しても防げません。 防げないものに対しては、「その場で調べ直せる状態」を持っておくのが唯一の対策です。

直島 ― ライブで調べてもらえたことが決定的だった

この旅で AI がいてよかったと最も強く感じたのが、直島でした。

  • 車を停めて高松港に着いた時点で「宮浦行きのフェリーの方がいいか」と聞き、8:12発・宮浦9:02着・片道680円の便に変更
  • 町営バスの発車時刻(宮浦港発 8:40 / 9:06 / 9:45 / 10:01 / 10:32)、所要9分、定員28名まで即答
  • 並びながら「9:45のバスなら乗れるか」と聞ける
  • 帰りも「それより早いフェリーはあるか」をその場で確認

実際には、美術館行きのバス停は長蛇の列で臨時便が出て、我々は3本目に乗車。「桃山まで行かないので農協前で降りてください」と案内されました。

午前7時前にフェリーに到着したときはガラガラでした。7:20の直島行き高速船に間に合いましたが、美術館は10時オープンなので8時15分の普通便で行くことに。しかし、時間が経つと凄い人数となりました。直島は大人気なのですね。(妻のブログより)

時刻表・運賃・定員・整理券の有無を、行列に並びながら数十秒で返してくれる。 これがないと、ここまで柔軟にスケジュールを動かすのは相当きつかったと思います。紙のしおりとその場の検索だけでは、たぶん一番早い便を逃していました。

丸ごと捨てた日もある

9日目です。直島のアートに、二人ともどうしても乗り切れませんでした。

アートで儲けようという感じがして、そこの部分は素直に楽しめなかった。

それで翌日の淡路島の予定を全部キャンセルし、チェックアウトまで宿でゆっくりし、浜ちどりで生しらす丼を食べ、レンタカーを返してから神戸でウイスキーの量り売りを楽しむ、という日に組み替えました。

しおりを守ることより、その日の気分に合わせる方が正しい。 そう判断できたのは、代替案が土台の上に用意されていたからです。


8. 正直な話 ― AI も間違える

信頼して丸ごと任せるのは危険です。実際に見つけた間違いを3つ挙げます。

1. 閉店した店を載せていた
香川のスーパーを買い出し先としてしおりに書いてありましたが、その店は2023年2月に閉店し、跡地は別のホームセンターになっていました。しおりを印刷した後に発覚。 別のショッピングセンターに差し替えました。

2. 位置関係を地図ではなく住所から推測していた
前述の「あか」の件です。

3. 祝日の特別営業を拾えていなかった
神戸のウイスキーの店について「祝日休みなので今日は休み」と言われましたが、公式 Instagram のシルバーウィーク特別スケジュールでは、その日は営業でした。店舗情報サイトの通常営業の記載しか見ていなかったわけです。私が Instagram を見つけて指摘しました。

いずれも、公式サイト・公式SNS・電話・地図という一次情報に自分で当たれば防げるものです。AI の答えは完成品ではなく、精度の高い下書きだと思っておくのがちょうどいい。

一方で、間違いを指摘したときに言い訳をせず、即座に認めて組み直してくるのは、非常に扱いやすかったです。


9. 10日間ダイジェスト

日付 ルート 主な立ち寄り 泊
9月13日(日) 新千歳 → 神戸 南京町の豚饅頭(5個600円)/KOBEとんぼ玉ミュージアム/三宮のストリートピアノ 神戸
9月14日(月) 神戸 → 姫路 → 倉敷 姫路城(中には入らず外観と周囲を1時間)/姫路おでん/美観地区のライトアップ 倉敷
9月15日(火) 倉敷 → しまなみ海道 → 今治 大原美術館(2,000円)/多々羅温泉しまなみドーム(420円)/亀老山展望公園/コンテックス タオルガーデン 今治
9月16日(水) 今治 → 道後 → 内子 → 宇和島 道の駅 風早の郷 風和里(鯛めし300円)/道後温泉「空の散歩道」と足湯/内子ワイナリー(5種試飲) 宇和島
9月17日(木) 宇和島 → 大洲 → 梼原 → 高知 おはなはん通り・ポコペン横丁/おおず赤煉瓦館/雲の上の図書館・ゆすはら座 高知
9月18日(金) 高知(連泊) 高知城/土佐あかうしのステーキ/桂浜/牧野植物園 高知
9月19日(土) 高知 → 瀬戸大橋 → 高松 瀬戸大橋記念館(無料シアター30分)/香川県立東山魁夷せとうち美術館 高松
9月20日(日) 高松 → 直島 → 淡路島 直島新美術館/ANDO MUSEUM(オンライン600円)/草間彌生「赤かぼちゃ」 淡路島
9月21日(月) 淡路島 → 神戸 香の館パルシェ/浜ちどりの生しらす丼/ウイスキーの量り売り/三宮のストリートピアノ 神戸
9月22日(火) 神戸 → 新千歳 → 余市 ポートライナーで神戸空港へ ―

移動は毎日3時間以内に収まるよう組みました。長距離移動を避けたおかげで、10日間まったく疲れませんでした。


10. これから使う人へ ― 7つのチェックリスト

  1. 動かせないもの(航空券・レンタカー・宿)を先に予約し、「これは動かさない」と宣言する
  2. 好みではなく制約を伝える ― 歩く速さ、食事の重さ、予算の止め方
  3. 「空白時間は3〜4択で聞いて。勝手に埋めないで」と頼む
  4. 1日1チャットに分ける ― 長い会話は細部を落とす
  5. 営業時間・定休日・料金・閉店は、出発前に公式サイトか電話で自分で確かめる
  6. カレンダーに入れる。.ics は UID を固定してもらえば、入れ直しても重複しない
  7. 現地でもすぐ相談できる状態にしておく ― これが一番効く

しおりは、その通りに動くために作るのではありません。安心して崩すために作るのだと思います。

土台がしっかりしていれば、雨が降っても、アイドルの公演とぶつかっても、美術館が期待外れでも、その場で別の楽しみ方に切り替えられる。そのときに、時刻表と運賃と定休日を数十秒で返してくれる相棒がポケットに入っている。

それが「Claude と共に行く旅」の正体でした。

カテゴリー: ZAKKI パーマリンク

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