「リスク」を、「危険性」と訳すなかれ

英和辞典で「リスク」を調べると、「危険」「恐れ」といった訳語が並ぶが、一般的にはそれで良いのかもしれないけど、株式投資の世界では、それは正しい訳ではない。

投資の世界では、リスクとは、必ずしもマイナスを意味するものではなく、プラス・マイナス両方を含む変動幅を意味する言葉だ。

銀行預金に比べて株式投資はリスクがある。というのは表現としては正しいが、この意味を正しく理解していない人がとても多い事に驚かされる。

リスクがあるから株式投資をするべきではない、ということではなく、リスクがあるから株式投資をしたほうが良いのである。同時に投資と投機の違いも理解しておく必要があるが、一発当てようとするのが投機であって、しかるべき根拠を持って望むものが投資。そして本来の投資とは株式投資という狭い話ではなく、将来の成長を期待してそこに一定の値を投じる事を意味する。「値」というのはお金だけでなく、努力や時間も含む。わかりやすいのは自己投資であって、自分の将来の成長のために、時間や努力やお金を使う事だ。それが成功すれば、ほとんどは、投じた価値以上の価値を将来得られることになる。

株式投資の話に戻すが、リスクとは、元本割れを意味する言葉ではなく、時々刻々とその価値が増えたり減ったりする事を意味する。これが株式投資の本質であって、減ることもあるが増えることもあるわけで、だからこそ、銀行預金ではなく株式投資をする意味というものがある。現在の日本において、リスクが無いものの代表例は、タンス預金と銀行預金で、今や銀行預金は豚さんの貯金箱とほぼ同じく、何年預けていても全く増えない箱となってしまっている。そして、このインフレ時代では、増えないということは、「減る」という事を意味する。つまり、銀行預金をするということは、金額ベースで言えばリスクゼロだが、価値ベースで言えば、マイナスのみのリスクということになる。株式投資が、プラスもマイナスもあるリスクであるのに対して、銀行預金はマイナスのみのリスクとなってしまっている。にも関わらず銀行預金に固執する人が多いのは、まさに、リスクを危険性と訳してしまっているからではないだろうか。

さて、株式投資のリスクは、プラスもマイナスもある、その変動幅であるのだが、変動は、毎日、マーケットが空いている間は秒単位で変動している。この変動幅というのは、実際に目にしていない人の想像を遥かに超えるもので、目まぐるしく上がったり下がったりしているもので、これに一喜一憂するものでは無い。大事なのは、もっと長期目線でどうなるかということであって、オールカントリーとかS&P500といったインデックス投資の場合は、5年、10年、20年といったタイムスケールで上がるのか下がるのかという話なのであって、しかも、絶対ということは無いが、人類の歴史が始まってから、長期目線で見れば、それは必ず右肩上がりになるのであって、下がることはない。なぜならば、下がるということは人類が退化することであって、今の暮らしを捨てて、原始人に戻るか、あるいは、世界を滅ぼすような大戦争が始まって、結果的に人類の大半が滅びてしまうというような事を意味するからだ。そんな状況になって自分の財産を心配する意味はあるのだろうか、もちろんそうなったら、貨幣価値なんてゼロになるから、何億円持っていたところで何も買えないのだけどね。

私は若い頃から、自分の「経験」には金を惜しまないという方針だった。特に旅行とか人との出会い、本を買うとかなんらかの技術を身につけるということは、銀行預金より遥かに大事だとおもっていて、結婚前は、自分の食費よりバイクのガソリン代の方が高かったりしたものだが、今思えばこれも一種の投資であったろうと思う。今同じ事をしようとしても、金銭的にはなんとかなるかもしれないが、体力とか、そのことに対する自分の成長の度合いとかを考えると、「あの時」と同じ事は出来ないし、リターンを期待することは出来ない。つまり、投資というのは、お金の世界かそうでないかに関係なく、「時間」「タイミング」というファクターがとても重要なものなのだと思う。もちろん、早ければ早いほど良いなんてこともなく、それに適したタイミングというものがある。どちらかというと、遅いより早い方がずっとましだとは思うけれども。早すぎたらやりなおせるけど、遅すぎたら取り返しがつかないのであるから。

いずれにしても、本題に戻るとすれば、リスクはプラスマイナスあって、それは自己投資も同じであって、自分の経験に努力や時間やお金をつかって、それがプラスになることもあるけど、何にもならないかマイナスになることもある。だけど、長い目で見れば、やはりそれはプラスであったと感じる事の方がずっと多いはずだと信じている。それがリスクであって、マイナス面だけを見て恐れてはいけないのだ。

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