金は天下の回りもの。r > gが生み出す血流障害。

生前贈与とDie With Zeroが促す、資本と信頼の血流改善


回らなくなった“金”という血液

かつて「金は天下の回りもの」と言われていた。でも、現代社会の中でその金はどこを回っているのだろう。働く人には残らず、資産を持つ人に集まり続ける。社会全体が血流障害を起こしているように感じられる。


r > g:労働が報われない社会の病理

ピケティの言う「r > g」(資本収益率 > 経済成長率)とは、働いて得るより、持つだけで増えるという社会構造の指摘である。これが続くなら、労働は振り込みになるだけで、格差は治らない。資本家はリスクを取っているとも言われるが、本来のリスクとは何か?を考える必要がある。


投資とは役立つ未来を信じて課すこと

投資の本質は「年利を貰う」ことではなく、「誰かの挑戦や社会を支える」ことだと思う。数値的な利益より、信頼や共感の形で金を課す。それは、いわば「静かで長い拍手」のような行為ではないだろうか。


現代投資のずれ:「応援」の意味の希薄化

現在の投資は、「何に資金を課しているか」が見えなくなっている。利回りだけが重視され、投資が「グラフ」や「数字」の世界に折りたためられる。その結果、投資が「関係性」を失い、「投棄」へとすり替わりつつあるのではないか。


Die With Zeroの思想:金を残すなら、経験を

『Die With Zero』は、金を増やすのではなく、経験に変えることに重を置く思想だ。最も意味ある時期に、最も意味ある人に、最も意味ある形で資産を流す。それは、死後の相続より、生前贈与に意味があることを示している。


生前贈与の形は、信頼の形

親から子への生前贈与は、ただの金銭移転ではない。「信じてるから課す」、「事成を見守る」という、たくさんの無言のメッセージを含んでいる。これは、「視える相続」としての新しい形でもある。


相続は、すでに形骸化しつつある

死後に資産を残すという、かつては当然とされていた発想も、今では時代とズレ始めている。資産を保有し続けることが「万が一のために」と眠ったままになり、誰にも活用されずに死に金となることは、ささやかな自由のようで、実は社会に大きな阻害を残している。
私自身、”Just In Case” と言いながら捨てられないモノが増えているタイプなので、あまり偉そうなことは言えないのですが、
「使うつもりで持つ」ことと「使わずに残る」ことの違いは、思った以上に大きいのかもしれません。


r = g を想像する:投資も労働も社会参加

r = g(資本収益率 = 経済成長率)の社会を想像することは、資本から得られる利益と、働いて得る所得の伸びが等しくなる社会を思い描くことだ。それは、資産を持つことが特別な優位性にならず、投資と労働の両方がフェアな選択肢になるということを意味する。

このとき、投資は「何もしなくても増える仕組み」ではなく、社会に関わる一つの参加手段として位置づけ直される。投資も労働も、それぞれが異なるアプローチで社会に貢献するものとして、対等な役割を果たすことができる。

この「並列」の意識が定着すれば、「稼ぎ方」や「生き方」そのものに多様性と尊厳が生まれる。投資家は未来に託し、労働者は現場で支え、その両方が対話しながら社会を形づくっていく。

r = g の社会とは、単なる経済指標の一致ではなく、「どう生きて、どう参加するか」が問われる成熟した社会のかたちなのかもしれない。


お金と信頼がめぐる社会へ

私たちの社会における金の流れを、人間の血流になぞらえて考えてみると、その重要性がよりはっきりと見えてきます。健康な身体には、栄養と酸素を届けるスムーズな血流が必要であるように、健やかな社会には、信頼と共感に基づいた資金の循環が不可欠です。滞った血流が病をもたらすように、止まったお金は経済や関係性を蝕んでしまう。

投資、労働、家族の支え、社会貢献──それぞれの行為は本来、異なるようでいて根っこではつながっている。どれも「誰かや社会に関わりたい」という気持ちから生まれるものだからだ。

r > g の構造をただ批判するのではなく、r = g の世界を想像してみること。それは、金の流れのあり方だけでなく、人と人との信頼の循環のかたちを見つめ直すことにもつながる。

お金、労働、家族、未来──それぞれの「あるべき姿」を見つめ直しながら、よりバランスの取れた、健やかな社会を築いていけたらと思う。金を回すというのは、不動の仕組みではなく、人間の活動そのものに近い。信頼によって金が流れば、金は生きた形で社会を駆動させる。そこには「手放しで増やす」という発想はなく、誰に資源を課すか、というわずかな視線があるだけでも社会は広がりを持てる。

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