何らかの新規プロジェクトを立ち上げる時に出てくる言葉がスモールスタート。
自分がそれを好んでいるということもあるのだけど、多くの場合クライアントさんは、良いアイデアだということに有頂天になってしまって、一定の投資をして、いきなり大きなシステムを作りたがる傾向にある。いわゆる功を焦るという感覚なのだが、苦労してOKをもらってそれなりの予算がついてスタートする事が多いので、仕方のないことなのかもしれない。
しかし、いきなりぶちあげたものは、たいてい失敗するものだ。
何故か、初めてのもの、今までなかったものであればあるほど、それを浸透させるには時間が必要だし、予期しない反応もあるし、軌道修正を考えておくことは絶対不可欠なのだが、最初にでっかくぶちあげてしまうと、予算が尽きてしまったり、軌道修正が難しくなったり、要するに後に引けなくなってしまうことが多く、結果一定の需要を確保できないまま終焉ということになる。
ところが、考か不幸か、最初に予算があまりなかったものは、「とりあえずこれだけ」と絞り込んだ状態から始めることになるので、低予算でコアとなる部分だけをしっかり作り込むことになるので、仮にそれが失敗してもたいした損害にならず、次の挑戦に繋げられることもあるし、それが成功して認知されて、利用者からの要望も出て、次の予算を確保して、気がつけば、10年、20年と続いて、ある時に、時代の流れに併せてリニューアルというかたちで一気に大きなシステムとして世に出てくるということも少なくない。知らない人から見ると、突然成功したかのように見えるかもしれないが、結構地道にやっていた時期があって、芸能人とか歌手とかもそういう人が居たりするのと同じかもしれない。
このスモールスタートが、まったくできないのが、我が国の政府だ。住基なんてのもあったが、マイナンバーカードしかり、今回の汚染水放出もしかりである。やると決まったら、明らかに失敗だろうがなんだろうが、「政府の威信をかけて」猛進するという姿勢は滑稽でしか無い。
汚染水放出が安全だなんて、どれだけ計算しても誰にもわかるわけがないのだから、そうしなければならないのであれば、汚染水を一定量放出してみて、一旦留めて、その影響をきちんと調査して、影響がないと判断できれば、業業関係者、他国の理解を得て、もうすこし放出してみるということを繰り返していけば良いものを、一旦放出開始してしまえば勝ちみたいな考えでいるからこんな状況になるのだと思う。
スモールスタートには、長期的な視点と、柔軟性と、辛抱強さが必要なのだ。それが無いものは、失敗するか、無理を通して道理が通らない状況になることが多く、誰から見ても成功というものにはならないことが多い。