かつて昭和の時代、銀行預金は絶対的な選択肢であり、親からは「貯金しなさい」と教えられたものです。その背景には、高い利率と、投資が一攫千金を狙うギャンブルのように見られていたことがあります。しかし、現在では銀行預金の利率はごくわずかで、NISAのような制度が普及したことで、「貯金だけでなく、投資もしよう」という考え方が広がっています。
「300万円の銀行預金を活用する場合」を具体例として、自分を納得させる意味でも、投資が思っているほど危険ではなく、資産形成に役立つ可能性があることを計算で確認してみます。
300万円の銀行預金を活用する場合
例えば、次の車の購入資金として300万円を銀行預金に預けているとします。楽天銀行の普通預金(年利0.18%)であれば、1年間で得られる利息は以下の通りです。
300万 x 0.18 / 100 = 5,400 円
一方、この利息を投資で得るには、いくら必要でしょうか?投資の年利を仮に7%とすると、次のように計算できます。
5,400 / 0.07 = 77,143円
つまり、300万円のうち約7.7万円を投資に回すだけで、銀行の利息を上回る可能性があるのです。
7.7万円の投資が、300万円の銀行預金に匹敵するパワーを持っていることを考えると、少額を投資に回すだけでも大きな意味を持つことがわかります。
投資のリスクとインフレの目減りを期待値で比較する
「投資で大きく損をするかもしれない」と考える場合、それは可能性と確率を誤解している場合が多いようです。投資とインフレによる目減りを期待値で比較してみましょう。
ここでは、インフレ率を2%/年として計算してみます。つまり、毎年 物の値段が2%上がり、現金の価値が2%下がる計算になります。銀行の利子だけでは、この目減りを補えません。そこで、例えば300万円のうち100万円をS&P500に投資するケースを考えてみます。
この場合、次のようなリターンが想定されます。
- +15%のリターンの確率:45% → 利益:+15万円
- +5%のリターンの確率:35% → 利益:5万円
- -10%の損失の確率:19% → 損失:-10万円
- -50%の損失の確率:1% → 損失:-50万円
期待値を計算すると、
(15万円 × 0.45) + (5万円 × 0.35) + (-10万円 × 0.19) + (-50万円 × 0.01) = +6.1万円
残りの200万円は銀行預金に残しておけば、0.18%の利子で3,600円が得られます。これを加えると、期待値は+6.46万円となり、インフレによる6万円の目減りを補うことが十分期待できます。
一方、300万円をそのまま銀行預金に置いた場合、インフレ率2%で価値が年間-6万円目減りすると仮定されます。このように期待値で考えると、投資には合理的な意味があると考えられます。
株式投資は、最悪50%減るかもしれないと単純に考えると、-50万円と-6万円を比較してしまい、「50万円減るより6万円減った方がマシだ」というネガティブな結論に至りがちです。その結果、投資に踏み切れないかもしれません。しかし、期待値で計算してみると、実際には+6.46万円と-6万円を比較することになります。このように、期待値で考えれば、投資はリスクとリターンを冷静に判断した上で、検討する価値が十分にあると言えるのではないでしょうか?
投資を考える上での視点
このような計算をしてみると、投資を検討する際の材料として使えるかもしれません。「最悪のケースを考えて不安になる」ことは自然なことですが、一方で「何もしないことによるリスク」も存在するのです。
投資をするかどうかはもちろん個人の判断です。ただ、銀行預金と投資のリスクとリターンを冷静に比較することで、自分に合った選択肢を見つける助けになるのではないでしょうか。
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